残された人生の生き方を求めて

平均寿命まではまだまだですが、50代後半に差し掛かって、残された時間で、本当に知りたかったこと、そしてその答えを探してみたいです。私の考えたことや、その手助けになった本や体験を書いていきたいと思います。多分に宗教的な雰囲気にもなっていくかもしれませんが、直接宗教を題材にしたブログではありません。

『男はつらいよ』寅さんに思う

新型コロナのために、自宅で過ごす時間が多くなり、Netfrixに登録して映画を見始めました。
その中で『男はつらいよ』シリーズを見たのです。

男はつらいよ』シリーズは、20代のころ友人に勧められて見たのが最初です。それからしばらくはまって、その当時は過去の作品もビデオで見たものです。
今回、Netfrixでは過去作品が全て見れるので、それこそ20数年ぶりに見てみました。 


最初に友人から紹介されて見たときの第一印象は、よく覚えています。
実は最初、寅さんには、いい印象を持てませんでした。
私は『男はつらいよ』シリーズは喜劇映画で、きっと寅さんは愉快で、常に周りに笑いを振りまく人なんだろうと勝手に思って見始めたのです。
ところが私に目に映った寅さんは、怒りっぽくって乱暴で、自己中心的で我がままで、常識を知らずに周りに迷惑をかけてばかりいる、あまり私の好きなタイプの人物ではなかったのです。私からすると、とんでもない人、はっきり言うと「笑えない人」だったのです。
ですが友人に勧められるまま見続けていると、むしろ寅さんの周りの人の優しさや、怒りっぽいけれど人情味がある寅さんの人柄にも惹かれていって、見続けることになりました。 


そして今回、Netfrixで過去作品を見てみたら、20代のころには感じなかった思いが込み上げてきたのです。
ちょうど私が今、仏教の考え方、浄土の教えに共感を持っているからでしょう。私から見た寅さんは、典型的な「凡夫」なのです。

寅さんには欲は少ないように見えます。確かに人と競争して出世しようとしたり、お金にがめつい感じはしないのですが、テキヤではサクラを使って物を売りつけたり、飲み屋の勘定を人任せにしたり、思い付きで散在して、その支払いからも逃げてしまったり、お金に関してはかなりズルいことをしています。
また、ハッタリをかまして偉そうな態度もしたり、名誉欲も決してないわけではないようです。

自己中心的な思考も、こと女性関係に関しては顕著です。
まず、どのストーリーでも寅さんが心を寄せた女性に振られることになっているのですが、この心を寄せるというのも、単なる寅さんの勘違い、つまり自分に都合のよい解釈が発端になるケースがほとんどです。
相手には全くその気はなくても、少し親切にしてもらっただけで、「この娘は自分に気がある」と考えてしまう。そして寅さんはその娘に惚れ込んでいく。
だけど実は、その娘には別に心を寄せる人や婚約者がいたりするのです。その娘さんも、決して寅さんを騙そうとしたわけではなく、普通にしていただけです。寅さんが自分の勝手な解釈で、勘違いをしていたケースがほとんどです。

このように、女性に対し自分の都合の良い解釈をして、想像(妄想?)を膨らませ、すぐその気になってしまう寅さんですが、今回久しぶりに見て、「ああ、私も同じだ」と強く思いました。
実は私も、女性がちょっと優しく笑顔で話しかけてきただけで、「もしかしたら…」という考えを描いてしまうような人間でした。最近は歳を取って現実も多少は分かってきましたが、それでも女性に対して全くそういう勘違いや自分都合の解釈をしていないか、というと、恥ずかしながら今の年齢でも「そんなことはない」と否定はできません。
こういうことは、若いころは、さほど強く感じていなかったと思います。寅さんはあくまでもスクリーンの中の人、私は「バカだな、恥ずかしいことをするよな、寅さんは」と笑いながら見ていただけでした。 


そんな寅さんですが、私とは決定的に違うところに、今回気が付きました。

寅さんは、自分を徹底的に「バカ」だと思っているのです。
これは決して謙遜ではないようなのです。「私はバカですから」といいつつ、100パーセントはそう考えていない人が多いのではないでしょうか。私はそうです。自分はバカだ、愚か者だ、と思いますが、心の奥底のどこかで「だけど自分は分かっている」「だけど自分は頭は悪くない」と思っているのです。
この自分を消し去ることは、未だにできません。

だけど、寅さんは100パーセント自分はバカだと思っているのではないでしょうか。
例えば第15作『寅次郎相合い傘』でのラストに近いシーンです。(ネタばれなので、ここまでで興味を持った人は、以下は読まずに映画を見てください)

売れない歌手のリリーが寅さんとの結婚を決意するのですが、寅さんはその彼女を追いかけません。妹のさくらは、涙ながらに寅さんに詰め寄ります。

「どうしたの、どうして追っかけて行かないの。お兄ちゃんは、お兄ちゃんはリリーさんのことが好きなんでしょう?」
「もうよせよ、サクラ………あいつは、頭のいい、気性の強いしっかりした女なんだよ。俺みてえなバカとくっついて、幸せになれるわけゃねぇだろ?」

脚本の力なのか、演出の力なのか、渥美清さんの演技力なのか分かりませんが、自分は賢い人間だ、自分はものごとが分かっている、などとは微塵も感じさせないのです。

私の寅さんに対しての印象は、最初のころ決して良くなかったのですが、なぜその寅さんにひかれてこのシリーズを若いころ見ていたのか、そしてまた今見ているのか、その答えの一つは、自分がバカであることを認め切っている寅さんにあることに気が付きました。
これは、私には絶対できないことなのです。煩悩だけは寅さん同様に、いやもしかしたらそれ以上にあるのですが、それでも私は自分をバカだと、100パーセント思えません。
現に、このようなブログを書いていることもその証拠ではないでしょうか。

このブログを寅さんに目の前で読んでもらったら何と言うでしょう。
もしかしたら、こう言うかもしれません。

「はぁ~すごいねぇ、俺には何を書いているのか、さっぱりわかりゃしねえ。あんた、頭いいんだねぇ、さすがたくさん本を読んで、学のある人は違うよな………あ、ところでよ…」